2025年の日本には、エネルギーや食料の輸入依存、少子高齢化による国家の持久力の低下、サイバーや宇宙領域での防衛力の脆弱さなど、複数の構造的なリスクが横たわっています。これらの「弱点」は、もし敵対勢力が意図的に突いてきたとすれば、国家の根幹を揺るがしかねない重大な脅威となり得ます。
本稿では前回の#1に続いて、これらの課題を「ヒト×AI討論」という形式で掘り下げ、AIの力を借りてその構造を可視化し、制度改革を含む中長期的な政策提言を行います。#2では、ChatGPTのDeep Researchを使用してさらに深掘りしました。
未来に備えるために、ヒトとAIはどう対話し、何を見出すのか。ぜひ一読ください。
エネルギー・食料の輸入依存
ヒト:
7つの弱点に対する施策を、国家戦略、中長期的な制度改革の観点で考えてください。
ChatGPT:
日本が中長期的に強化すべき7つの国家的弱点に対して、国家戦略レベルでの制度改革や施策を調査します。
具体的には、エネルギー・食料自給率、少子高齢化対策、情報戦や世論分断への耐性強化、法制度改革、サイバー・宇宙防衛力、外交的自立性、地方・中小企業支援に対する政策動向や提言を体系的に整理し、実効性ある戦略として提示します。
1. エネルギー・食料の輸入依存
日本はエネルギー資源と食料の多くを海外に依存し、安定供給にリスクを抱えています。エネルギー自給率は2021年度で13.3%とOECD諸国で最低水準(38か国中37位)であり、東日本大震災後に原発停止で大幅低下した後も未だ震災前の20%台に戻っていません。
2022年度時点で化石燃料への依存度は83.5%にも達し、原油の90%以上を中東に依存しています。ウクライナ危機や中東情勢悪化で供給不安・価格高騰が生じ、日本は円安も相まって2022年に過去最大の貿易赤字(20兆円超)を記録しました。食料自給率もカロリーベースで38%と低迷し、多くの穀物や飼料を輸入に頼っています。こうした状況は国家の存立基盤の脆弱性となり、中長期的な戦略的対応が急務です。
現状の政策・評価:
エネルギー分野では調達先の多角化や石油備蓄など安全保障策が進められています。政府は中東産油国との関係強化やLNG・石炭の権益確保を図り、経済安全保障推進法に基づき天然ガスを特定重要物資に指定して有事に備え企業間で融通できる枠組みを整備しました。
また、原子力発電所の安全最優先での再稼働や再生可能エネルギー導入拡大、水素・CCUS技術開発など、国内でのエネルギー供給強化も進めています。実際、原発再稼働や再エネ増加で2023年度のエネルギー自給率は15.2%と震災後最高を記録しました。食料分野では2022年末に「食料安全保障強化政策大綱」が策定され、農産物の国内生産拡大や肥料・飼料の安定供給確保が目標化されました。政府は2030年までに小麦+9%、大豆+16%、飼料作物+32%など生産面積拡大を掲げ、肥料原料の備蓄や国産代替(堆肥活用等)による供給網強化にも着手しています。しかし依然として海外依存からの脱却には道半ばで、エネルギー価格高騰時の経済打撃や、農業従事者の高齢化による国内生産力低下など課題が残ります。
中長期の政策提言:
持続的なエネルギー・食料安全保障のため、以下の改革が必要です。
- エネルギー自給力の強化:再生可能エネルギーの大幅導入と送電網整備、水素・アンモニアなど次世代エネルギーの実用化を加速し、2030年代に非化石エネルギー比率を飛躍的に高める。また、安全が確認された原発は地元合意の下で計画的に再稼働し、安定供給と脱炭素を両立します。需給逼迫時には需要側の省エネ・ピークシフト促進策も拡充します。
- 輸入ソースの多元化と備蓄:中東依存を下げるため、米豪など信頼できる国からのLNG・石炭調達を増やし、官民で海外権益投資を進めます。また、石油国家備蓄に加えLNGや食料穀物の備蓄制度を整備し、有事に数ヶ月分の国内需要を賄える戦略備蓄を確保します。経済安全保障の観点から、肥料・飼料や医薬品原料等も含め重要物資の在庫拡充とサプライチェーンの国内・同盟国回帰を促します。
- 農業生産力・食料自給率向上:大規模営農への農地集約やスマート農業技術の導入支援によって生産性を向上させ、主要穀物の国内生産割合を引き上げます。例えば休耕地活用や農業法人化に対する補助を拡大し、2030年までに食料自給率を現在の38%から45%程度へ引き上げる目標を設定します。あわせて新規就農者への支援拡充と、輸出産業としての高付加価値農林水産品の育成にも取り組み、農業の持続可能な成長産業化を図ります。
- 需要側の取組と国民理解:フードロス削減や地産地消の推進など、消費面での工夫により輸入需要の抑制を目指します。食育や啓発によって国民の食料安全保障への意識を高め、多少高くても国産品を選ぶ消費行動を促します。またエネルギーについても省エネ家電の普及やゼロエネ住宅の促進など需要削減策を講じ、脆弱性低減に寄与させます。
これらの政策により、中長期的には海外依存を緩和し、資源価格変動や国際情勢に左右されにくい強靭な国家経済基盤の構築を目指します。
少子高齢化による国家の持久力低下
2. 少子高齢化による国家の持久力低下
少子高齢化の進行は、日本の人口・経済規模を縮小させ、社会保障負担の増大と労働力不足を招いて国家の持久力を弱めています。2022年の出生数は過去最低の77万人余りとなり、2024年には初めて年間出生数が70万人を割り込む見通しです。合計特殊出生率も1.3を下回り、人口減少に歯止めがかかっていません。
一方で65歳以上人口は全体の29%超に達し(2025年時点)、2025年には高齢化率30%を超える見込みです。現状のままでは2030年代に若年人口が現在の倍のペースで急減し、少子化は「もはや歯止めが利かない状況」になるとの危機感が示されています。現役世代の減少による税収・国力の低下と、社会保障給付を支える持続力の低下が深刻な課題です。
現状の政策・評価:
政府は「異次元の少子化対策」として、子育て支援策の抜本強化に乗り出しました。2023年4月には子ども家庭庁を新設し、2024年度からの3年間を集中取組期間とする「加速化プラン」を策定しています。具体策として、児童手当の所得制限撤廃と高校卒業までの支給延長、第3子以降月3万円への増額など経済支援を拡充しました。出産育児一時金も42万円から50万円へ引き上げられ、高等教育費負担軽減のため多子世帯学生の授業料無償化(2025年度開始)なども盛り込まれています。
加えて、短時間労働の社会保険適用拡大や「年収の壁」対策によって、出産後の就労継続支援も進めています。政府はこれら施策により今後3年間で約3.6兆円を投入し、子ども予算をGDP比でスウェーデン並みの水準へ引き上げる計画です。2030年代初頭までに子ども関連予算を倍増させる目標も明記されました。一方、高齢者に対しては、年金支給開始年齢の段階的引上げ(65歳へ)や高齢者雇用安定法の改正による70歳までの就業機会確保努力義務化など、社会全体で「生涯現役」を促す制度整備が進められています。
これらの対策は必要な方向性であり、若い世代への投資拡大は「未来への最も有効な投資」と評価されています。しかし、出生率の向上には時間がかかり、依然として「どれだけ効果があったか綿密な検証が必要」と指摘されています。現状の施策だけでは不十分との声もあり、教育費・住宅費など子育てコストの更なる軽減や、働き方改革の深化による仕事と育児の両立環境づくりが求められています。また移民の受け入れ拡大など抜本策への議論は本格化しておらず、長期的な人口減少への対応は道半ばです。
中長期の政策提言:
少子高齢化に歯止めをかけ、持続可能な社会経済を維持するため、以下の施策を提言します。
- 子育て支援の飛躍的拡充:子ども関連予算を2030年までに倍増させ、経済的理由で希望する子ども数を持てないことのないよう大胆な支援を行います。具体的には、児童手当の更なる増額や大学まで含めた教育完全無償化の段階的実施、住宅支援(若年・子育て世帯向けの低利融資や空き家活用による格安提供)などを進めます。特に第2子・第3子以降の出生に手厚い優遇策を導入し、多子世帯ほど負担が軽くなる税・社会保障制度へ見直します。
- 働き方改革と女性・若者の活躍促進:長時間労働の是正と柔軟な働き方(テレワーク推進やフレックス制度普及)により、仕事と育児の両立を可能にします。また男性の育児休業取得を大幅に促進し(取得率目標の法定化等)、家庭での育児参加を当たり前にする風土改革を行います。若年層の雇用安定や賃金底上げも不可欠です。最低賃金の着実な引上げや新卒・若手の賃金カーブ改善を企業に促し、結婚・出産をためらわない経済的基盤を用意します。併せて非正規雇用の正社員化支援や「年収の壁」撤廃など、若年女性が就労と出産を両立できる環境を整備します。
- 高齢者の社会参画と社会保障改革:健康な高齢者が経験を活かして活躍できる場を増やします。定年制の柔軟化やシニア人材のマッチング支援を行い、希望者は70歳以上でも就労や地域活動に参加できるようにします。また、高齢世代にも応分の負担を求める社会保障改革(例えば高所得高齢者の医療費負担引上げや年金給付調整)に踏み込み、現役世代との公平と制度持続性を確保します。医療・介護分野では予防重視のヘルスケアやICT活用により費用抑制とサービス向上を図ります。
- 移民・外国人材の戦略的受け入れ:人口減少の補完策として、専門人材や介護・建設等の労働力として一定規模の外国人を積極的に受け入れる戦略を検討します。高度人材ポイント制の拡充や在留資格の緩和により若い移民の定住を促し、将来的な定住・帰化も視野に入れた移民政策を長期的視点で構築します。文化的受容のための日本語教育や共生支援にも投資し、社会の活力維持に貢献させます。
- 生産性向上と技術革新:人口減少を補うには一人当たり生産性を上げるしかありません。AI・ロボット・DXの徹底活用により労働集約型から知識集約型経済へ転換を図ります。特に介護・物流・サービス分野で省力化技術を導入し、人手不足の影響を緩和します。またスタートアップ育成や研究開発投資で新産業を興し、少ない人でも経済成長できる構造を作ります。
これらの包括的なアプローチによって、結婚・出産・子育てへの希望がかなえられる社会を実現し、長期的には人口減少にブレーキをかけます。同時に高齢化社会でも活力を保ち、国力と持久力の維持に努めます。
分断・無関心が広がる世論
3. 分断・無関心が広がる世論
社会の分断傾向や政治への無関心の拡大も、日本の民主的意思決定力を弱める深刻な問題です。近年、欧米で見られるような左右二極化は日本では顕著ではないものの、世代間や都市部と地方、経済的格差による意見の乖離が指摘されています。また、若者を中心に政治離れが進み、投票率の低下や市民の無関心層の増大が懸念されています。
実際、2021年衆院選の投票率は60代で71%だったのに対し、20代は36%にとどまりました。有権者の高齢偏重(いわゆる「シルバー民主主義」現象)により、政治が将来世代より高齢世代の声を優先しがちになる構造も生まれています。その結果、若年層は「自分たちの声が政治に反映されない」と感じてさらに無関心になる負の循環が起きています。ネット上では偏った情報による認識の違いが対立を深める懸念もあり、社会全体で共通の土台に基づく冷静な議論が難しくなりつつあります。
現状の施策・評価:
政府や自治体も若者の政治参加促進や世論の分断防止に向けた取り組みを始めています。2016年には選挙権年齢が18歳に引き下げられ、高校での主権者教育が導入されました。また近年、選挙啓発イベントやインターネット投票の検討など投票率向上策が取られています。SNSやオンラインを活用した政治情報発信も政党や行政で進み、双方向コミュニケーションによる有権者の声の吸い上げが図られています。
一部自治体では住民対話の場や若者議会を設置し、無作為抽出の市民が政策提言を行う試みも行われています。こうした努力にもかかわらず、若年層の投票率低迷傾向に大きな改善は見られず、直近の国政選挙でも20代投票率は依然40%未満に留まっています。また、分断に関しては日本では伝統的に「一億総中流」の社会統合意識が強かったものの、近年は経済格差の拡大や地方の衰退により国民の間に不満が蓄積しつつあります。現状の政策は社会の統合・連帯感を醸成するまでに至っておらず、引き続き新たなアプローチが必要です。
中長期の政策提言:
世論の分断を防ぎ、国民の関心と参加を高めるため、以下の施策を提言します。
- 主権者教育と政治リテラシー向上:学校教育での主権者教育を充実させ、若い世代に政治や社会課題への関心を育てます。ディベートや模擬選挙を通じ、意見の異なる他者と議論する力やメディア・リテラシーを養います。SNS等の情報に流されない批判的思考力も涵養し、陰謀論やデマに惑わされない素地を作ります。社会人に対しても啓発講座や公共キャンペーンで政治参加の意義を訴え、「政治は自分に関係ある」という意識改革を図ります。
- 若者の政治参加促進:投票率向上のための制度改革を検討します。例えば投票年齢の更なる引下げ(16歳案など)の是非を議論するとともに、インターネット投票・期日前投票の利便性向上で投票しやすい環境を整備します。18歳前後の若者が初めて選挙に触れる機会に情報提供を強化し、各大学や企業で投票参加を促す取組(休暇取得推奨等)も推進します。また、若者代表の政治参加を進めるため被選挙権年齢の引下げや、政治分野における年代多様性確保の検討も必要です。
- 対話と包摂による社会統合:世代や立場の異なる人々が直接対話し相互理解を深める場を支援します。地域コミュニティで高齢者と若者の交流イベントを開催したり、オンラインで世代間フォーラムを設けたりして、「分断される側」が顔の見える関係を築く機会を増やします。政府も政策決定にあたりパブリックコメントや市民対話集会を積極開催し、多様な意見の調整に努めます。分断を煽る差別的言動やヘイトスピーチには法の範囲で適切に対処し、包摂的な社会環境を維持します。
- 情報空間の健全化:世論分断の一因となるフェイクニュース対策とメディアの信頼回復にも取り組みます。大手プラットフォームと協力して悪質な偽情報の拡散を抑制し、ファクトチェック団体への支援や情報検証の仕組みを強化します。また地域メディアの活性化や公共放送の質向上を通じ、偏りの少ない情報を誰もが得られるようにします。アルゴリズムによるエコーチェンバー現象に対しては表示多様化の措置を促し、ユーザーが異なる視点の情報に触れる機会を増やします。
- 政治への信頼向上:政治不信・無関心を招く汚職や不透明な行政を無くすため、ガバナンス改革を断行します。政治資金の透明化や公文書管理の徹底などクリーンな政治運営を図り、スキャンダルによる信頼低下を防ぎます。同時に政策決定過程の見える化(アジェンダ設定から決定までの情報公開)を進め、「自分たちの声が届いている」と感じられる仕組みを作ります。議会においても与野党の建設的議論を促し、単なる政争ではなく国民目線で問題解決に取り組む姿勢を示すことが重要です。
これらの施策により、国民が政治や社会課題を「自分事」として捉え、前向きに参加する社会を目指します。多様な意見が対話を通じて調整されることで民主主義の健全性を保ち、内向き志向や極端な主張に社会が引き裂かれるのを防ぐことができるでしょう。
法制度と指揮系統の曖昧さ
4. 法制度と指揮系統の曖昧さ
日本の有事対応や危機管理に関する法制度・指揮系統には不明確さが残っており、国家の即応能力に課題があります。平時には問題が顕在化しにくいものの、大規模災害や武力攻撃事態など非常時において「誰が最終責任を持ち指揮を執るか」「どの法に基づき権限行使するか」が曖昧との指摘があります。例えば憲法には緊急事態条項が無く、パンデミック時のロックダウンや戦時下での国会議員任期延長といった措置が現行制度では想定されていません。
このため自民党や維新など複数政党が憲法に緊急事態条項を追加しようと主張しており、非常時の国会議員任期延長などが議論されています。一方で濫用リスクから反対論も根強く、法整備は進んでいません。また防衛面では、従来陸海空自衛隊が別個に存在し統合的指揮命令系統が弱いとされてきました。政府は2022年策定の国家防衛戦略で「陸海空自衛隊を一元的に指揮できる常設の統合司令部創設」を打ち出し、2024年度末に統合作戦司令部を新編するための防衛省設置法改正を成立させました。この統合司令部により平時から有事までシームレスに領域横断作戦を指揮できる体制を構築する狙いです。
しかし現状では統合司令部発足を待たずして、グレーゾーン事態(武力攻撃に至らない侵害)への対処や、自衛隊と警察・自治体との連携指揮など依然不明確な点があります。災害対応でも、2011年東日本大震災時に政府と現場の指揮系統混乱が指摘されたように、縦割りによる対応遅れの改善が課題です。
現状の施策・評価:
安全保障法制面では2015年の平和安全法制によって武力攻撃事態対処や集団的自衛権限定行使の枠組みが整備されました。また国家安全保障会議(NSC)が2013年に設置され、総理を中心とした統合的戦略判断の場ができています。加えて2022年末の安全保障関連3文書改訂で敵基地攻撃能力の保有など防衛政策の転換が図られ、有事対応能力の向上が期待されています。ただ依然として法体系の不備は残ります。緊急事態に関する包括的規定がなく、コロナ禍では私権制限を伴うロックダウンが法的に困難で対応が後手に回りました。
憲法改正が停滞する中、緊急時に選挙を延期する場合の法整備(公職選挙法改正)など部分的対応が検討されています。指揮系統面では、2025年3月に統合作戦司令部が正式発足し陸海空を統合運用できる体制へ移行予定で、自衛隊の指揮命令の一元化が大きく前進します。これにより米軍との共同作戦においても対等な指揮調整がしやすくなるでしょう。他方、サイバー・宇宙といった新領域では指揮系統・所管が複数府省にまたがり、防衛省・内閣サイバー局などの連携が課題です。災害時の対応では、防災基本計画の下で内閣府防災担当が総合調整役となりますが、自治体との情報共有や初動スピードに改善の余地があります。
中長期の政策提言: 国家の危機管理能力を高め迅速・的確に対応できるよう、以下の制度改革を提言します。
- 緊急事態法制の整備:憲法改正による緊急事態条項創設が望ましいものの時間を要するため、まずは法律レベルで非常時の包括対応を可能にする「国家緊急事態基本法(仮称)」を制定します。これにより大規模災害・パンデミック・有事の際に内閣総理大臣に一時的な権限集中を認め、迅速な避難命令や物資配給指示、国会議員任期の短期延長など必要措置を取れるようにします。ただし人権制約には厳格な期限と国会承認を要件とし、濫用防止策を講じます。将来的には憲法に緊急事態条項を明記する議論を深め、立法・行政・司法各機関の役割と統制を憲法上定めることも視野に入れます。
- 統合司令塔機能の強化:NSCや統合作戦司令部を中核に、平時から各省庁・自衛隊・警察・自治体が連携する司令塔機能を拡充します。具体的には、国家安全保障局(NSS)のスタッフ増強と権限強化を行い、外交・防衛・経済安全保障を一元的に統括する体制を整えます。また内閣官房に「危機管理庁」を新設し、災害対応やテロ対策など国内危機も統合調整できるようにします。これにより、有事には首相・官房長官の下に関係機関トップが直結して指揮する体制(いわば日本版FEMA・国土安全保障省的な組織)を構築し、縦割りの排除と指令系統の一本化を図ります。
- 自衛隊と他機関の協力法制:災害時の自衛隊出動要件の緩和や、グレーゾーン事態での警察・海上保安庁との連携手順を明文化します。例えば大規模自然災害時には自治体要請がなくとも一定規模以上なら自衛隊が即応できる仕組み(プッシュ型出動)を導入します。また離島侵入などグレーゾーンでは海保と自衛隊が共同対処できるガイドラインを策定し、平時法制下でも指揮系統を統一できるよう特別措置法整備を検討します。
- 新領域(サイバー・宇宙)の指揮統制:サイバー防衛については、防衛省のサイバー防衛隊と政府全体のNISC(内閣サイバーセキュリティセンター)を緊密に連携させ、必要に応じ統合的なサイバー作戦司令部を設置します。これによりサイバー空間での攻撃に政府一丸で対処し、民間インフラ防御との情報共有も円滑化します。同様に宇宙分野では、宇宙領域の監視・防護を統括する部署を内閣府宇宙開発戦略推進事務局の下に置き、自衛隊宇宙作戦隊やJAXA等との一体的運用を図ります。
- 訓練・検証の常態化:法制度を整えるだけでなく、それが実効的に機能するよう定期的な政府総合訓練を実施します。大地震想定の図上演習、サイバーテロ訓練、国民保護法に基づく避難訓練などを繰り返し、指揮系統の不備や情報伝達の課題を洗い出して改善します。訓練結果は公開し、国民にも非常時の行動指針を周知徹底します。
以上により、「いざという時」に政府が迷わず迅速に対応できる体制を築きます。明確な法制度と指揮系統の下で初めて国民の生命・財産を守る力が発揮され、抑止力や危機対応力の向上につながるでしょう。
サイバー・宇宙防御の脆弱性
5. サイバー・宇宙防御の脆弱性
サイバー空間と宇宙空間は現代の安全保障の新たな戦場ですが、日本はこれら領域での防御体制が脆弱とされています。サイバー攻撃は政府機関や企業に日常的に発生し、重要インフラがサイバー攻撃で麻痺するリスクも指摘されています。にもかかわらず日本のサイバーセキュリティ人材・予算は主要国と比べ不足しており、防衛省のサイバー部隊も発足(2014年)時はわずか数十人規模でした。
宇宙では、人工衛星に対する妨害・破壊の脅威が高まっています。中国やロシアは衛星攻撃兵器(ASAT)の実験を行っており、米国も宇宙での抑止力強化を打ち出しています。日本は情報収集衛星や測位衛星「みちびき」などを運用していますが、軍事通信衛星や早期警戒衛星など宇宙防衛インフラは限られ、宇宙ごみ増大への対策も含め脆弱性が残ります。
現状の施策・評価:
政府は近年、サイバー・宇宙領域の防衛強化に本腰を入れ始めました。サイバー面では2022年の防衛力整備計画で自衛隊サイバー防衛隊の人員を大幅増強(~2027年に約4,000人規模)する方針が示され、陸海空各自衛隊にも専門部隊を順次拡充中です。また他省庁含めサイバー人材の育成を官民で推進し、ホワイトハッカー育成プログラムや情報系高等教育の強化が図られています。政府全体では「サイバーセキュリティ戦略2022」に基づき、省庁横断の脅威情報共有や重要インフラへのサイバー演習などが実施されています。さらに「能動的サイバー防御(Active Cyber Defense)」の法整備にも着手し、2024年6月には関連法案が成立しました。これにより一定の制約下で防衛目的の積極的なサイバー反撃能力を持つ道が開かれます。
宇宙分野では、航空自衛隊内に宇宙作戦隊(現在約100名規模)を2020年に創設し、宇宙ゴミや不審衛星の監視(SSA)を開始しました。米国との協力で宇宙監視データを共有し、2023年の日米首脳共同声明でも「宇宙での協力加速」が謳われています。防衛省は2023年度から小型衛星コンステレーション(多数の小型衛星群)構築に乗り出し、海洋状況把握やミサイル警戒への活用を目指しています。また2022年末の新防衛戦略で宇宙を「領域横断作戦の一環」と位置付け、敵による衛星攻撃に対する受動的防御策(予備衛星・シェルター技術等)の検討が始まりました。これらの動きは脆弱だった態勢の強化に寄与しますが、国際的水準から見ると日本の投資はまだ限定的で、サイバー攻撃件数の増加や中国の宇宙軍拡速度に追いつけていないとの評価があります。
中長期の政策提言:
サイバー・宇宙領域での国家防御力を飛躍的に高めるため、以下の政策を提言します。
- サイバー防衛体制の抜本拡充:自衛隊のサイバー防衛隊を計画通り数千人体制に拡大し、高度専門人材を確保します。同時に各省庁や重要インフラ企業にもCISO(最高情報セキュリティ責任者)配置を義務付け、政府・民間全体で1万人規模のサイバー防衛ネットワークを構築します。官民の壁を越えた情報共有プラットフォームを整備し、重大インシデント時にはNISC主導で即応チームを編成できるようにします。さらに能動的サイバー防御の具体的運用基準を整え、攻撃兆候を早期探知して相手のサーバー無力化など先制的遮断も可能とします(※法的・国際法的整合性に留意しつつ)。これにより国レベルでのサイバー抑止力・即応力を高めます。
- 人材育成と技術開発:サイバー人材不足に対応するため、防衛大学校や情報系大学でサイバー専攻枠を拡大し奨学金支援を行います。ホワイトハッカー競技会や育成プログラムを全国で実施し、若い才能を発掘します。AIを活用したサイバー攻撃検知・防御システムの開発にも官民投資を増やし、ゼロデイ攻撃への自動対処技術を確立します。暗号技術や量子通信など次世代セキュリティ技術の研究開発も国家プロジェクトで推進し、日本発のサイバー防衛ソリューションを創出します。
- 宇宙インフラ防衛と活用:衛星への攻撃や妨害に備え、まず防衛省が独自の早期警戒衛星・偵察衛星を増強します。米国からの早期警戒衛星情報に依存する現状を改善し、自前の赤外線センサー衛星を2030年までに運用開始する計画を立てます。また通信衛星についてもXバンド防衛通信衛星の増設と、小型予備衛星の常備により多重化・分散を図ります。敵対勢力によるGPS妨害に対抗し、準天頂衛星システムを増やして測位の独立性を確保します。さらに、衛星コンステレーション技術を活用し、低コストで多数の小型衛星を打ち上げて監視網を強化します。この際、刷新サイクルを3~4年程度とし技術進歩に追随するとともに、衛星が一部破壊されても残存が機能するレジリエンスを持たせます。
- 宇宙状況把握(SSA)と防御:レーザーによる宇宙ゴミ除去技術や、他国衛星接近を監視する地上・宇宙センサー網を拡充します。必要に応じて敵衛星を無力化するソフトキル手段(ジャamming、サイバー攻撃)も研究し、外交面での抑止として宇宙安全保障のルール作りを主導します。宇宙領域での日米協力を深化させ、共同演習やデータ共有を定常化します。日本は宇宙安全保障戦略を策定し、「宇宙における自衛権」の解釈や宇宙抑止の基本を明示することも急務です。
- 国際連携とルール形成:サイバー・宇宙はいずれも一国だけでは守りきれない領域です。日本は同志国との連携を強め、たとえばサイバー面では米欧豪印との間でリアルタイム脅威情報共有ネットワークを構築します。演習も共同で行い、他国への攻撃兆候を共有して集団防衛する体制を目指します。宇宙では、宇宙状況把握データを各国で融合する「宇宙版五輪の書」を形成し、宇宙空間の秩序維持にあたります。同時に国連などで宇宙・サイバーの国際ルール策定に積極参加し、軍拡競争にならない抑制的枠組みづくりをリードします。
これらの取り組みによって、サイバー・宇宙という新領域でも日本の安全保障体制は飛躍的に強化されます。国家機能を麻痺させるサイバー攻撃や宇宙資産喪失のリスクを最小化し、現代戦に対処し得る総合防衛力を確立することが可能となるでしょう。
外交的板挟み構造
6. 外交的板挟み構造
日本の外交は米中対立をはじめ複雑な国際環境の中で難しい綱渡りを強いられています。安全保障の要である米国と、経済関係が深い隣国中国という二大大国の間で「板挟み」状態に陥っているとの指摘があります。中国は軍事的にも経済的にも台頭し、日本にとって「これまでにない最大の戦略的挑戦」と外交青書2023でも明記されました。
しかし日本経済は中国市場やサプライチェーンに大きく依存しており、米国主導の対中圧力に全面的に追随すれば経済的打撃を受けかねません。他方、日米同盟は日本外交の基軸であり、安保面では米国なしに地域の安定は図れません。このジレンマに加え、ロシアのウクライナ侵略では対露制裁に踏み切りつつエネルギー調達での板挟み、台湾海峡有事の可能性に対する態度など、難題が山積しています。
また中東や東南アジア諸国との関係でも、米欧と新興国の狭間で舵取りが求められています。例えばイラン核問題では米国と友好関係のある日本が仲介役を期待される一方、サウジなど湾岸国からの石油確保も重要という具合に、多方面に配慮する必要があります。
現状の施策・評価:
日本外交は「価値観と国益のバランス」を図る全方位外交を基本としています。米国とは日米安保体制を一層強化し、経済面でもインド太平洋経済枠組み(IPEF)への参加など連携を深めています。同時に中国に対しては「建設的かつ安定的な関係の構築」を掲げ、首脳会談やハイレベル対話を継続しています。
例えば2022年の日中国交正常化50周年には首脳オンライン会談が実現し、関係改善の糸口を探りました。政府は「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」のビジョンを掲げ、米欧だけでなくASEAN・インド・太平洋島嶼国など幅広い国々と協力関係を築こうとしています。岸田総理は2023年3月にインドでFOIPの新たなプランを発表し、インフラや海上安全保障、人道支援など四つの柱で地域に貢献する方針を示しました。これは中国を名指しで排除せず多様な国と協調する包摂的アプローチで、開かれた秩序維持を目指すものです。また欧州とはG7やNATOパートナーシップを通じ連携を強め、英国との円滑化協定締結など安全保障協力も拡大中です。
ロシアとは北方領土交渉が中断する一方、エネルギー利権(サハリン2)への参加は維持し、国益を守りつつ制裁も科す折衷策を取っています。全体として日本外交は米同盟を軸にしつつ、自主性も模索する二面作戦を進めており、一定の成果(例:日韓関係改善やクアッド枠組み定着)が見られます。しかし戦略的自律性の弱さやメッセージ発信力の不足を指摘する声もあります。とりわけ中国への態度が曖昧だと国内外から批判され、逆に強硬に舵を切れば経済界から懸念が出るという板挟み状況は依然続いています。
中長期の政策提言:
日本が複雑な外交環境で国益を守り積極的役割を果たすには、以下の戦略的アプローチが必要です。
- 戦略的自律性の確立:日米同盟を基盤としつつも、日本自身が主体的に地域秩序形成に関与できるよう戦略的自律を高めます。具体的には、防衛力の抜本強化(防衛費GDP2%への増額など)を着実に実行し、自国防衛の能力を向上させます。これにより米国への過度な依存を緩和し、発言力を強めます。また経済安全保障政策を推進し、先端技術・資源の自立度を上げることで対中交渉力を持ちます。例えば半導体や電池等で国内生産基盤を整え、「ここ一番」で外圧に左右されない経済構造を構築します。
- 多角的な同盟・パートナー網:米国との同盟強化に加え、地域・世界で多角的なパートナーシップを構築します。インドやオーストラリアとはクアッドを深化させ安全保障協力を拡充、東南アジア諸国とは個別・ASEAN双方で防衛装備や経済支援を通じ関係強化します。欧州とはイギリスやフランスとの防衛連携(共同軍事演習や装備品開発協力)を進め、NATOともサイバー・宇宙など新領域で協力します。中東・アフリカ・中南米についても、中国の影響力に対抗すべく日本独自の外交資源(ODA、大使人脈、民間投資)を投入し、全方位に「日本ファン」を増やす努力を続けます。こうしたネットワークが板挟みを緩和し、日本の選択肢を広げます。
- 対中外交の巧緻化:中国に対しては「対話と抑止」の両面を強化します。一方で尖閣諸島など安全保障上譲れない点では日米同盟の抑止力で臨み、他方で経済・環境など相互利益分野では協調の余地を探ります。例えば気候変動対策での日中協力プロジェクトや、アジアの債務問題での日中対話メカニズムを提案し、衝突回避と信頼醸成を図ります。またホットラインの活用や安保対話の定期化で偶発的軍事衝突を防止します。台湾海峡有事については「力による一方的現状変更に反対」という原則を貫きつつ、中国が暴発しないよう外交的働きかけ(米中間の緊張緩和支援など)も行います。つまり、中国には毅然としつつ出口を用意した外交で臨みます。
- 国際秩序づくりへの貢献:日本が板挟みを超えて発言力を持つには、国際公共財の提供による信頼獲得が重要です。自由貿易体制の維持や気候変動対策、感染症対策など地球規模課題で日本がリーダーシップを発揮すれば、米中いずれにも偏らない「グローバルな責任ある国家」として評価されます。例えばTPP11の維持・拡大交渉を主導し、ルールに基づく経済圏を強化します。またG7議長国(2023年広島サミット)の成果を踏まえ、核軍縮や新興国支援でも積極提案を行います。国連改革についても安保理非常任理事国として取り組み、多国間主義の擁護者として存在感を示します。
- 経済安全保障と企業支援:米中対立下で日本企業が板挟みにならぬよう、政府が経済安全保障で指針を示します。例えば先端技術の対中輸出管理やサプライチェーン再編について明確な産業政策を出し、企業が戦略を立てやすくします。同時に企業外交も支援し、在中日系企業にはリスク分散策(東南アジアへの生産移転支援等)を講じます。一方で対米ビジネスでも補助金競争に負けぬよう国内投資促進策を強化し、日米双方と経済関係を保てる環境を整えます。政府・民間が一体となり経済と安全保障のバランスを取る長期戦略を練るべきです。
以上のように、日本は同盟と多角外交を両立させつつ、自主性ある外交戦略を追求します。板挟み状況そのものを完全に消すことは難しくとも、賢明な外交によって「選択肢の幅」を広げ、最終的には日本の国益と国際秩序維持の双方に資する立場を確保することが目標です。
地方と中小企業の空洞化
7. 地方と中小企業の空洞化
人口減少と経済の集中化により、日本の地方地域と中小企業は「空洞化」が進んでいます。地方の多くは若年人口の流出と高齢化で地域社会が維持困難となり、「消滅可能性都市」が現実味を帯びています。2014年の増田レポートでも2040年までに約半数の市町村で20~30代女性が半減しうると警告されました。現在も東京圏への一極集中傾向は続き、地方では学校や病院の統廃合、商店街の衰退が起きています。
一方、日本企業の99.7%を占める中小企業も、高齢化やグローバル競争で活力を失うものが増えています。製造業では生産拠点の海外移転(産業空洞化)や、国内サプライチェーンの弱体化が懸念されています。加えて中小企業経営者の平均年齢は年々上昇し、後継者不在で廃業の危機に瀕する企業が2025年頃にピークを迎えると言われます。これは年間数十兆円の経済損失につながる可能性があります。地方の中小企業が消滅すれば地域経済の土台が崩れ、地方から更に人がいなくなる悪循環です。
現状の施策・評価:
政府は2014年に「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定し、地方創生に取り組んできました。直近では岸田政権が掲げる「デジタル田園都市国家構想」の下、デジタル技術で地方の暮らしを都市並みに便利・快適にし魅力向上を図る戦略を推進しています。2023年改訂の総合戦略では「全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会」を目標に掲げ、5年間で地域のデジタルインフラ整備やテレワーク拠点造成、スマート農林水産業の普及などに取り組む計画です。これに伴い、地方移住支援(金銭補助や住宅支援)も拡充され、コロナ禍以降テレワーク定着で地方移住希望者への交付金制度が創設されました。
中小企業対策では、中小企業庁を中心に生産性向上と事業承継支援を重視しています。IT導入補助金やものづくり補助金により中小のDX投資を支援し、企業間連携や設備投資による付加価値向上を促しています。またM&Aマッチング支援や事業承継税制の拡充で後継者難に対処し、廃業を減らす措置も講じています。さらに最低賃金引上げに対応するための下請け対策(価格転嫁円滑化法)など、中小企業の賃上げを後押しする政策も打ち出されています。これら施策により一定の成果は出ていますが、まだ道半ばです。
地域の人口流出は東京への一極集中是正が十分進まず依然続いており、地方GDPも減少傾向が止まっていません。中小企業の生産性も大企業の約半分程度と低位にあり、海外企業との競争力には課題が残ります。事業承継支援も件数的には氷山の一角で、抜本対策には至っていません。
中長期の政策提言
地方創生と中小企業活性化を車の両輪と捉え、地域経済の空洞化に歯止めをかけるため、次のような政策を提言します。
- 地方への大胆な人流・投資促進:若者が地方に住み働く魅力を感じるよう、思い切った施策を実施します。具体的には、地方移住者への一人当たり数百万円規模の補助金や住宅提供(空き家リノベ支援)を拡充し、移住のハードルを下げます。地方大学の魅力強化(都市の大学との連携やリカレント教育拠点化)も進め、進学時の人口流出を抑えます。さらに政府機関や企業の地方移転を誘導し、地方に良質な雇用を創出します。例えば省庁の一部を地方都市へ移転したり、本社機能を地方分散する企業への税優遇を拡大したりします。インフラ投資では、高速通信網や幹線交通網の地方整備を加速し、「どこでも働ける」環境を整えます(デジタル田園都市構想の早期実現)。
- 地域産業の育成と多様化:地方ごとに強みのある産業クラスターを育成します。観光・農林水産品・地場製造業など地域資源を磨き上げ、国内外に売り出す支援を強化します。例えば観光立国として、地方へのインバウンド誘致に国が戦略的マーケティングを支援し、主要観光地だけでなく地方隅々まで観光消費が行き渡るようにします。農業では6次産業化(生産+加工+流通)を推進し、地方発のブランド食品を育てます。再生可能エネルギー事業も地方に優先的に誘致し、地域収入源とします。加えて地方の中小企業が都市部・海外と取引拡大できるようECサイト進出や展示会支援など販路開拓策を講じ、多角的な産業が地方に根付くようにします。これにより「一極集中から多極分散へ」の流れを作ります。
- 中小企業の生産性革命:中小企業の付加価値向上を国家戦略として位置付けます。5年間で中小企業の労働生産性を年平均2%以上引き上げるKPIを設定し、それに沿った政策を総動員します。まず中小企業のDXを徹底支援し、全ての中小企業が基本的ITツールを導入できるよう補助金と専門家派遣を大幅拡充します。製造業ではロボット導入補助を、中小サービス業ではオンライン化支援を強めます。次にベンチャー・大学との連携でオープンイノベーションを促し、新製品開発や事業転換へのチャレンジを資金面から後押しします。政府系金融機関を通じて低利の設備投資融資枠を拡充し、中小企業の老朽設備更新や省力化投資を進めます。これらにより持続的に生産性を底上げし、中小企業が賃上げや待遇改善を実現できる体力を付けます。
- 事業承継・創業支援:2025年問題とも言われる中小企業の大量引退時代に備え、事業承継支援を抜本的に強化します。後継者バンクの全国展開やM&Aマッチングプラットフォームの拡充で、廃業回避のマッチングを加速させます。承継時の贈与税・相続税は実質ゼロとなる特例措置を拡大適用し、円滑承継を妨げるコストを除去します。加えて、地域金融機関や商工団体と連携して潜在的後継候補(親族外含む)を発掘・育成し、承継希望企業と結びつけます。同時に新規創業も促進し、地方で起業する人への補助金や空き店舗提供、創業融資の拡大を行います。これにより廃業の穴を新事業で埋め、地域経済の新陳代謝を図ります。
- 中小企業の賃上げと人材確保:中小企業が人材を惹きつけるためには待遇改善が必要です。そのため下請け単価適正化の徹底や、公契約条例による賃金底上げを推進します。政府調達でも中小企業に見合った適正価格を保証し、安値受注のしわ寄せで賃金が抑えられないようにします。また中小企業向けの税制優遇(賃上げ促進税制など)を拡大し、賃上げした企業には大胆な減税措置を与えます。人材面では、中小企業への就職を促すため奨学金返済支援や地方UIJターン就職者への一時金支給などインセンティブを設けます。エッセンシャルワーカー(介護・保育等)など人手不足分野へ人材が円滑に移動できるよう、職業訓練とマッチングを強化します。こうした支援で中小企業の人材確保と定着を図り、空洞化を防ぎます。
これらの総合的対策によって、地方と中小企業が再び活力を取り戻すことが期待されます。地域に仕事と人が循環することで東京一極集中に歯止めがかかり、国全体の均衡ある発展が可能となります。中小企業が元気になれば日本経済全体の底力が向上し、将来的な持続成長にもつながるでしょう。政府・地方・民間が協力して大胆な手を打つことが肝要です。
各分野の弱点克服には長期的視点と継続的な政策推進が求められます。上記の改革提言は政府のみならず民間や国民の協力も不可欠です。エネルギー・食料自給や人口問題、そして経済・安全保障など複合的課題に対し、国として総合戦略を据え着実に実行することで、日本の脆弱性を強靭性へと転換していくことが可能になるでしょう。そしてそれこそが将来世代に向けた責任ある国家戦略と言えるのではないでしょうか。
続く#3では、同じ問いをGoogleのGeminiとの対話で行います。